創業の経緯と社会貢献への想い
ー合同会社HARUKAを立ち上げられたきっかけについて教えてください。
私はもともと、中学校や高校、特別支援学校などで約40年間、教員として勤務しておりました。そのうち約25年間は特別支援教育に携わり、さまざまな発達特性のある子どもたちと向き合ってきました。退職後は趣味などを楽しみながら、ゆっくりと過ごすという選択肢もありましたが、長年の教員生活で培ってきた知識や経験を、社会に還元できないだろうかと考えたことが、起業のきっかけです。
ー会社の事業展開や、事業の柱についてお聞かせいただけますか。
事業の中心となっているのは、「児童発達支援・放課後等デイサービスみらい」をはじめとする6つの事業所の運営です。さらに、不登校のお子さんを対象とした「フリースクールみらい」も開設し、現在は合わせて7事業所を運営しています。学校に通うことが難しい子どもたちにも、安心して自分らしく過ごせる居場所が必要だと強く感じ、学校という枠組みだけにとらわれず、一人ひとりの子どもが自分のペースで成長できる環境をつくりたいという想いから、フリースクールを開設しました。
ー会社経営における根底の理念やビジョンはどのようなものでしょうか。
一言で表すならば、「社会貢献」でしょうか。これまでの人生で得てきた経験や知識を活かし、目の前の子どもたちや保護者の皆さまのお役に立てれば、それが何よりうれしいことだと思っています。もちろん、事業を継続するためには健全な経営が欠かせません。しかし、利益を追求すること自体が目的になってしまっては、本来の使命を見失うことにもなりかねません。「子どもたち一人ひとりの可能性を大切にし、その成長を支えていくこと」。それが、私の事業の原点であり、これからも変わることのない理念です。
独自の強みである手厚い個別療育
ー他の事業所にはない、合同会社HARUKAならではの強みは何ですか。
私たちの大きな特徴の一つは、個別療育における手厚い支援体制です。当社では、お子さん1人に対してスタッフ2人が関わる「1対2」の個別療育を実施しています。この体制は、単にスタッフの人数を多く配置することが目的ではありません。一人ひとりの発達特性や得意なこと、苦手なこと、そして日々の小さな変化まで丁寧に捉え、その子に合った支援を提供することを大切にしています。
ー1対2という手厚い体制には、どのようなメリットがあるのでしょうか。
最大のメリットは、一人のスタッフが療育プログラムを進める間、もう一人のスタッフはお子さんの表情や反応、行動の変化などを観察し、必要に応じて支援を補助したり、記録を取ったりすることができます。また、対人関係やコミュニケーションを学ぶ場面では、二人のスタッフが役割を分担し、ロールプレイなどを取り入れた実践的な支援を行うことも可能です。
ー療育プログラムにおいてこだわっている点について教えてください。
私たちが特に大切にしている中心となるのが、「ABA(応用行動分析)」という、行動の仕組みを科学的に捉えるアプローチです。子どもの行動には、必ず何らかの背景や理由があります。そして、その子にとって達成しやすい環境や関わり方を工夫し、小さな成功体験を積み重ねながら成長につなげていきます。また、専門のスーパーバイザーに月1回、あるいは2か月に1回程度、事業所を訪問していただき、実際の療育場面を観察したうえで、スタッフへのコンサルティングや研修を実施しています。
危機を乗り越えたスタッフファースト
ーこれまで会社を経営されてきた中で、一番の苦労や危機はどのようなことでしたか。
約5~6年ほど前のことです。当時、事業所の運営を中心となっていたスタッフが、新たな事業所を立ち上げ、一部の従業員や数名の利用者の方々も移られるという出来事がありました。私自身、組織運営や人材育成の面で至らないところがあったのだと思います。そうした困難の後には新しい出会いもありました。私の理念や療育に対する考え方に深く共感してくださる、意欲と専門性を備えた優秀なスタッフが次々と入職してくださったのです。その方々の力もあり、組織の体制を一から見直し、以前にも増して職員同士が協力し合える環境を築くことができました。
ー代表としてスタッフの採用や雇用において意識されていることはありますか。
一番に伝えているのは「ご自身の家庭を最優先にしてください」ということです。スタッフが私生活で困ったり疲弊したりすることなく、安心して動ける環境があってこそ、子どもたちに質の高い支援を提供できます。人手不足で困っている企業も多いですが、ありがたいことにうちは媒体や口コミ、ホームページからの問い合わせなどを通じて順調に良い人材が集まってくれています。
ースタッフの教育やスキルアップにはどのように取り組まれていますか。
採用時には3日間の新人研修を行い、会社の方針や療育の基本、子どもや親御さんとの接し方を私からしっかりとお話しします。その後も外部研修の案内や資格取得の補助を積極的に行っているほか、スーパーバイザーによる定期的な現場コンサルティングなどを通じて、全社を挙げてスキル向上に努めています。
日々のやりがいと業界の未来展望
ー日々の支援を通じて、最もやりがいや幸せを感じる瞬間はいつですか。
何と言っても子どもたちの成長を実感できる瞬間です。今まで言葉を発しなかったお子さんがお話しできるようになり、「先生」と呼んでくれたときの喜びは何物にも代えがたいですね。また、幼児期から関わってきたお子さんが小学校に上がって元気に通う姿を見届けられることも、元教員として本当に幸せなことです。
ー現在、事業を運営する上での課題や困りごとはありますか。
困りごとというほどではありませんが、子ども1人に対してスタッフ2人を配置しているため、人件費などの支出が多くなり、収支のバランスを取るのが難しい点はあります。公的給付で成り立っている事業ですので急に収入を増やすことはできませんが、スタッフにしっかりと還元できるよう、もう少し国からの報酬単価が見直されるとありがたいなと感じることはありますね。
ー福祉・教育業界の今後について、また挑戦する方々へのメッセージをお願いします。
この業界は今後、確かなエビデンスと目的意識を持った事業所が残り、目先の利益目的だけで参入したところは淘汰されていくと思います。子どもは大人の姿勢を敏感に感じ取っています。「子どもには分からないだろう」と適当に向き合うのではなく、スタッフ自身が高いモチベーションを持ち、確固たるコンセプトを持って子どもたちや親御さんに真摯に向き合い続けてほしいと願っています。