教育
幼児活動研究会株式会社 代表 山下孝一氏が語る、体育教育がつくる子どもたちの未来と経営の神髄

幼児活動研究会株式会社 代表 山下孝一氏が語る、体育教育がつくる子どもたちの未来と経営の神髄

幼児活動研究会株式会社
山下 孝一

「教育こそが本当の国力であり、国の未来を創る」そう熱く語るのは、幼児活動研究会株式会社で代表を務める山下孝一氏です。同社は全国の幼稚園や保育園へ体育指導員を派遣する正課指導をはじめ、課外の各種スポーツ教室、野外活動など、子どもたちの健やかな成長を支える多彩な事業を展開しています。創業から半世紀以上にわたり、幼児体育のパイオニアとして現場に立ち続けてきた山下氏。単に運動能力を伸ばすだけでなく、「体育教育」を通じて生きる力や人間性を育む独自の理念と、社員とともに歩んできた挑戦の軌跡についてお話を伺いました。


体育教育の信念と人間形成

まず初めに、幼児活動研究会株式会社が大切にされている教育のビジョンについて教えてください。

私たちが一番大切にしているのは、「子どもこそが国の未来を背負う存在である」という考えです。国家の根幹にあるのは教育であり、教育が人を創り、そして人の力が国の未来を創っていくと考えています。だからこそ、子どもたちの成長に関わる私たちの仕事は、単に運動能力や技術を身につけてもらうことではありません。体育を通して、挑戦する力や考える力、仲間を思いやる心など、人間の基本、人間として生きていくための土台となる力を育むことが、私たちの使命だと考えています。目の前の一人ひとりの子どもを育てることは、その子の未来だけでなく、日本の未来そのものをつくっていくことにつながる。それが、幼児活動研究会が大切にしている教育のビジョンです。

スポーツの指導と「体育教育」の違いは何でしょうか。

スポーツには、競技で勝つことやプロを目指すという側面もあります。一方、私たちが目指す「体育教育」は、体育を通して人間としての土台をつくることです。
親御さんが願うのは、我が子が成長し、将来幸せに生きていくこと。そのために、昨日できなかったことが今日できるようになる喜びを積み重ねながら、身体的にも、精神的にも、一人の人間として成長していく力を育てていきます。体育を通して、子どもたちの成長を支え、その先にある幸せな人生につなげていく。それが、私たちの体育教育です。

体育教育を通して、子どもたちにどのように変わってほしいとお考えですか。

体育を通して「できた!」という成功体験を積み重ね、一人ひとりがヒーローになる瞬間をつくる。その経験が「自分にもできる」という自信になり、「学校に行きたい」という力につながります。体育の力で子どもたちの自信と生きる力を育み、この教育を日本中に広げ、いじめや不登校をなくしたいと考えています。

事業モデルと教育に対する考え方

御社が展開されている事業の具体的な仕組みについて教えてください。

契約した幼稚園・保育園・こども園に指導員が赴き、午前中は園児全員を対象とした正課の体育指導を行います。午後からは園の部屋やグラウンドをお借りし、希望者を対象とした課外の体操教室などを実施しています。また、体育指導だけにとどまらず、園が抱える課題や目指す教育・保育の姿に寄り添い、教育内容の充実や園の魅力づくり、運営面まで幅広くサポートしています。現場で子どもたちを直接指導するだけでなく、園そのものの価値を高め、子どもたちの成長と、園の発展の両方を支えることが私たちの事業です。

課外教室や年間イベントではどのような活動を行っているのですか。

午後の課外指導に加えて、年間を通して遠足や夏の泊まりがけの合宿、冬のスキースケート教室など、スポーツを中心に様々な体験プログラムを提供しています。

教育現場での「順位をつけること」について、山下代表はどのようにお考えですか。

社会に出れば、順位や勝ち負けは当然あります。だからこそ、子どもの頃から競争を避けるのではなく、勝つ喜びも、負ける悔しさも経験することには意味があると考えています。ただ、私たちが体育教育で一番大切にしているのは、「何番だったか」ではありません。1番になったということは、足が速かったという一つの事実です。それ以上に大切なのは、たとえ最後の順位でも、最後まで諦めずに自分の力で走り切ること。負けて悔しいからこそ、もう一度挑戦すること。順位では測ることのできない、その子自身の頑張りや成長、そして人間としての立派さを育てることこそ、体育教育の役割だと考えています。

組織づくりと理念の浸透

全国に多くのスタッフがいる中で、理念を共有する難しさについてはいかがでしょうか。

会社は一つのチームであり、その中で最も大切なのは、「何のために私たちは仕事をしているのか」という目的を全員で共有することだと考えています。
全国に多くの社員がいるからこそ、理念を一度伝えただけで全員に同じように届くわけではありません。トップが「10」の思いを込めて伝えても、現場には「1」しか伝わらないこともある。だからこそ、経営者は100の思いを持って、何度でも、何年でも伝え続けることが大切です。理念は掲げるだけでは意味がありません。一人ひとりの行動につながるまで、伝え続ける。それが経営者の責任だと思っています。

社員の方々にはどのような目標を伝えているのでしょうか。

社員には、会社として大切にしている3つの目標を、繰り返し伝えています。
一つ目は、「未来を背負う子どもたちのために社会貢献する」こと。二つ目は、「立派な人格形成を目指す」こと。そして三つ目は、「幼児体育で日本一、人を喜ばす世界一になる」ことです。
そして、私は「社員が成長すれば、必ず子どもたちも成長する。子どもたちの成長が、日本の未来をつくっていく」と考えています。だからこそ、社員は会社の宝であり、命です。社員一人ひとりが成長し、誇りを持って仕事ができる会社にすることも、経営者の大切な使命だと思っています。
この3つは単なる会社の目標ではなく、私たちが何のために仕事をするのか、その存在意義そのものです。だからこそ、「自分の名前を忘れても、この3つは忘れるな」と言うくらい、何度も何度も伝えています。

繰り返し伝えることで、社員の皆様の意識はどう変わっていきましたか。

最初は「無理だ」と言っていた社員たちも、毎年毎年、同じ目標を繰り返し伝え続けることで、少しずつ意識が変わっていきました。
いつしか「やって当然だ」「そこを目指すのが当たり前だ」という意識に変わっていったのです。
一人ひとりの意識が変わることで、組織全体の基準も少しずつ高くなっていきました。理念は、伝え続けることで組織の文化になっていく。その変化を実感しています。

創業の苦労と経営者としての覚悟

創業当時、世間の「幼児体育」に対する反応はどのようなものでしたか。

55年前、25歳だった私が営業に回っても全く相手にされませんでした。「子どもと遊んでお金を取るのか、泥棒みたいだ」とまで言われ、本当に悔しい思いをしました。

組織の転換期となった大きな出来事や「覚悟」の瞬間について教えてください。

創業10年目頃、大きな転換期がありました。当時は、教員を目指す社員が腰掛けのような気持ちで働いているケースも多く、離職が続いていました。
そこで私は、「日本一になろう。スーツとネクタイを身につけ、社会人としての誇りを持って子どもたちを指導しよう」と宣言しました。
当然、反発もあり、結果として社員の半数が辞めました。しかし、そこからが本当のスタートでした。残ってくれた社員たちが、会社を変えようと自ら動き始め、誰に言われるでもなくマニュアルを作り、組織の仕組みを一から整えてくれたのです。
あの時、目の前の人数を守るのではなく、「本当に目指す組織の姿」を貫く覚悟を持ったことが、今の会社につながる大きな転換点だったと考えています。

最後に、これから経営者を目指す方や世の経営者の方々へメッセージをお願いします。

会社を経営する上で最も大切なのは、「自分たちの事業を通して、どう社会に貢献し、どう人を幸せにするのか」という明確な目的を持つことだと思います。
人は、お金のためだけに生きているわけではありません。本当の幸せや事業の成功とは、「人の役に立ち、心から必要とされること」の中にあります。
だからこそ、トップ自らが強い理念と情熱を持ち、その思いを社員やお客様への感謝とともに、言葉だけでなく行動で示し続けることが大切です。そうすれば、その思いに共感する仲間が集まり、どんな困難にも立ち向かえる強い組織がつくられていきます。
人から必要とされ、感謝される企業を目指してほしい。そして、自分たちの仕事が社会をより良くしているという誇りと、熱い信念を持って、挑戦し続けてほしいと思います。

Profile

山下 孝一

山下 孝一

幼児活動研究会株式会社

代表

設立:
昭和47年9月(1972年)
事業内容:
園児・小学生への体育指導や保育所・塾の運営、旅行企画および手配業務、 幼稚園・保育園経営コンサルティング
従業員数:
575名(2025年3月期)

経歴

25歳で創業し、当時は「幼児に体育など必要ない」と理解されにくい時代の中で、全国の幼稚園・保育園へ体育指導員を派遣する独自のビジネスモデルを確立。指導員の情熱と質の高い教育を提供し続け、業界の先駆者として同社を東証上場企業へと成長させる。順位や勝ち負けだけに囚われず、体育を通じて挑戦する心や失敗から学ぶ重要性を伝える「体育教育」を提唱。社員との目的の共有や人間味あふれる組織づくりを重視し、「人を喜ばせることが企業の成長につながる」という強い信念のもと、幼児教育の発展に情熱を注ぎ続けている。

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